在日コリアンを親に持つ川崎市在住の男子高校生(16)をネット上の匿名ブログで中傷したとして、川崎簡裁が大分市在住の男(66)に侮辱罪で科料9千円の略式命令を出していたことがわかった。生徒の代理人弁護士が16日に東京都内で記者会見し「ネット上の中傷が刑事事件として処罰される例はきわめて珍しい」と述べた。
代理人によると昨年1月、当時中学生だった生徒の実名入りで、若者たちが平和を訴えるイベントの記事が新聞やネットに載った。これにもとづいて男は、中国や韓国・朝鮮の排除を題名にとった匿名のブログに、この生徒の出自などを中傷する文章を投稿。川崎簡裁は男が生徒を「侮辱しようと考え、文章をブログに掲載させ、公然と人を侮辱した」と認定した。
生徒側は通信業者に発信者情報の開示を請求。5月に男の氏名が開示され、7月に侮辱の疑いで川崎署に告訴していた。男は取り調べに「日記のつもりで書いた」などと説明していたという。
生徒は「ひどいヘイトスピーチを見た恐怖を忘れることができません。今後は二度と差別しないでほしい」とコメントした。代理人の師岡康子弁護士は「匿名の書き込みでも身元を特定し処罰できることが示された。ただ現行制度ではネット上のヘイトスピーチの被害者救済には時間と費用がかかりすぎる。法整備や捜査態勢の整備を求めたい」と話している。(編集委員・北野隆一)