「経営学の神様」と称される米国の経営学者のピーター・F・ドラッカー(1909~2005)のもう一つの顔は、日本美術の収集家だった。その水墨画などのコレクション約200点を日本企業が購入し、千葉市美術館に寄託。4月13日から始まる所蔵作品展で一部公開される。収集した作品群から垣間見えるドラッカーの素顔とは。
ドラッカーは組織の力を引き出す「マネジメント」の重要性や、企業の社会的な責任などを提唱。高度経済成長期の日本企業にも影響を与えた。日本美術には20代の頃に「恋に落ちた」といい、来日するたび古美術品を購入。美術を通じて日本の特質を論じた文章を発表したり、大学で美術史を教えたりもしていた。
コレクションは全て絵画で、計197点。色鮮やかな浮世絵などはなく、水墨画や禅画、文人画といった「渋好み」の作品ばかりなのが特徴だ。特に、初期に集中的に集めた室町時代の水墨画に、学術上価値が高い作品が含まれるという。
室町時代後期の画僧・雪村周継(せっそんしゅうけい)の「月夜独釣図(げつやどくちょうず)」=写真=は、小さな画面に荒涼とした自然を力強い筆致で表現している。千葉市美術館の河合正朝館長は「雪村の作品の中でも名品」と評する。現存作品が少なく研究が進んでいない画家の作品も多く、「有名でなくても自分の感性に従い、面白いと思うものを買っていたことがよくわかる」とみる。
作品を自宅に飾っていたという…