仏ルノーの会長兼CEO(最高経営責任者)を退いたカルロス・ゴーン被告(64)が、退任に伴って受け取る金銭に仏政府が頭を悩ませている。最大で3千万ユーロ(約38億円)を受け取る可能性があると報じられ、「推定無罪の原則が働く」としてゴーン被告を擁護してきたマクロン政権も、「高すぎないように」とクギを刺し始めた。
カルロス・ゴーン もたらした光と影
仏紙パリジャンなどによると、ゴーン被告は退任に伴い、76万5千ユーロ(約1億円)の年金と、ライバル会社に一定期間転職しないことを条件に支払われる補償金を最大400万~500万ユーロ(約5億~6億円)受け取れる規定がある。最大でルノー株38万株(約26億円相当)を報酬として受け取れる可能性もあり、他の手当も合算すると3千万ユーロに達するという。こうした支払いの大半は株主総会の承認が要るため、そのまま支払われるとは限らない。ルノーが妥当な支払額を検討しているという。
ルメール仏経済・財務相は27日、仏ラジオの番組で「退職の際に受け取る手当が法外なものになることは誰にも理解されないだろう」と指摘。金額について「極めて注意を払っている」と述べた。仏国内では昨年11月から、格差に不満を持つ人々を中心に反政府デモのジレジョーヌ(黄色いベスト)運動が全土で続いており、ルノーの筆頭株主の仏政府も「口出し」せざるを得ない状況だ。
ルメール氏は番組で「フランスに本社を置く大企業経営者が、フランスに納税するよう義務づける」とも発言した。仏メディアは今月、ゴーン氏の税法上の居住地がオランダにあり、税逃れしていた疑いがあると報じていた。昨年11月の逮捕直後には「納税状況に不正な点は見当たらない」とゴーン被告を擁護していたが、世論の風向きが変わり、発言を軌道修正した。(パリ=疋田多揚)