ポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所がソ連軍に解放されて74年になる27日、収容所跡で記念式典があった。元収容者らが演説し、欧州に広がりつつある反ユダヤ主義やネオナチの動きに警鐘をならした。
アウシュビッツ強制収容所は1940年、ナチスドイツによって設置された。大量殺害を目的とした「ガス室」が設けられ、欧州各地から移送されたユダヤ人ら約110万人が犠牲になった。
式典には約50人の元収容者が参加。高齢化が進み、昨年より10人ほど少なかった。44年8月に移送されたというレオン・ワイントラウプさん(93)は演説で「一緒に連れてこられた日に、母と叔母はガス室で殺害された。今日でもナチスのスローガンを掲げて行進する人々がいるが、大量虐殺者と同じだ」と訴えた。
終戦間際に収容所からドイツに向かって行進させられたというヤニナ・イバンスカさん(88)は「零下20度の『死の行進』。若い世代が同じ道を歩むことがないように祈りたい」と話した。
式典にはポーランドのモラビエツキ首相のほか、イスラエル、ロシアの両大使らが出席した。
ポーランド国内で愛国主義が高まる中、今年は会場の外に国旗を持った多くのポーランド人が詰めかけ、「ユダヤ人だけではなく、ポーランド人の犠牲者にも焦点をあてるべきだ」などと訴えた。施設ではユダヤ系以外のポーランド人約7万5千人も犠牲になっている。(オシフィエンチム〈ポーランド南部〉=高野弦)