千葉県野田市の小学4年、栗原心愛(みあ)さん(10)が自宅で死亡し、両親が傷害容疑で逮捕された事件で、昨年2月下旬、父親の勇一郎容疑者(41)が母親のなぎさ容疑者(31)に指示して「お父さんにたたかれたのはうそです」という内容の書面を心愛さんに書かせ、県柏児童相談所に見せていたことが分かった。児相は書面を不審に思っていたが心愛さんに確認することなく、2日後に両親宅への帰宅を認める決定を下していた。
「自分の体だいじょうぶかな」心愛さんがつづったSOS
「自分が暴力に遭わないように」母親供述 千葉女児死亡
心愛さんは2017年11月6日、野田市立山崎小学校のアンケートで「父親からの暴力」を訴えた。柏児相は翌日、虐待の疑いがあるとして心愛さんを一時保護し、12月27日に、市内の父方の親族宅で暮らすことや母親が養育することなどを条件に解除した。
県虐待防止対策室によると、児相の職員が書面を見せられたのは、親族宅を訪問した18年2月26日。「お父さんに叩かれたというのは噓です」「小学校の先生に聞かれて思わず言ってしまいました」「ずっと前から早く(両親、妹と)4人で暮らしたいと思っていました」「児童相談所の人にはもう会いたくないので、来ないでください。会うと嫌な気分になるので、今日でやめてください」などと書かれていた。
この時、勇一郎容疑者は「今日にも連れて帰りたい」と言い、柏児相は2日後の28日、両親の家へ帰ることを了承した。
職員が書面を見せられた際、父親と親族がいたが心愛さんはおらず、心愛さんには確認しなかった。これに先立つ2月20日、柏児相は父親からの暴力を訴えたアンケートのコピーを市教委が父親に渡したことを関係者の会議で把握していた。
心愛さんが本心で書いたのか不審に思った職員は、3月19日に小学校で心愛さんに面会して確認。父親から母親にメールで届いた文面を「見ながら書き写した」と打ち明けたという。職員が「書いてあったのは(心愛さんの)気持ちと違う感じ?」と尋ねると、心愛さんは「お父さん、お母さんに早く会いたい、一緒に暮らしたいと思っていたのは本当のこと」と答えたという。
柏児相と県児童家庭課は5日夕、記者会見を開いて詳細を説明するとしている。
心愛さんが書かされた書面の内容
お父さんに叩(たた)かれたというのは噓(うそ)です。山崎小学校の●●先生に聞かれて思わず言ってしまいました。お父さん、お母さん、妹、(親族の呼び名)にたくさんの迷惑をかけてしまいました。ごめんなさい。ずっと前から早く4人で暮らしたいと思っていました。この間のときにも言いました。お父さんに早く会いたいです。児童相談所の人にはもう会いたくないので来ないでください。会うと嫌な気分になるので、今日でやめてください。お願いします。
(栗原勇一郎容疑者が示した文面を、県柏児童相談所の職員が原文表記のままメモした)
小4女児死亡事件をめぐる経緯(柏児相や野田市教委の説明などによる)
2017年
11月6日 心愛さんが千葉県野田市立山崎小学校のアンケートで「お父さんにぼう力を受けています」と記入
7日 千葉県柏児童相談所が一時保護
12月27日 親族宅での生活を条件に、一時保護を解除
2018年
1月15日 市教委がアンケートのコピーを父親に渡す
2月20日 児相や市教委、警察などが参加する市の「要保護児童対策地域協議会(要対協)」で、コピーを渡したことを報告
26日 父親が「お父さんにたたかれたのはうそ」と心愛さんに書かせた書面を児相職員に提示
28日 児相、心愛さんを自宅に戻す決定
3月上旬 心愛さんが自宅に戻る
19日 心愛さんが「父親に書かされた」と学校で面会した児相職員に明かす
2019年
1月7日 父親が学校に「沖縄にいる」と電話
11日 父親が学校に「2月4日に登校」と電話。学校は市に連絡
21日 児相からの電話に学校が「2月4日まで沖縄に帰省」と回答
22日 要対協が会議。心愛さんは議題に上がらず
24日 心愛さんの遺体を自宅で発見
25日 父親を心愛さんへの傷害容疑で逮捕
2月4日 母親を同容疑で逮捕