2月に入り、球春到来を告げるプロ野球のキャンプが始まった。新しく加入した選手の話題でにぎわう一方で、ユニホームを脱いだ元選手は「第二の人生」を歩み出している。昨季限りで現役を引退した元DeNAの田中浩康さん(36)は6日、母校の早大野球部のコーチに就任した。後輩たちを指導しながら、春から大学院に通い、スポーツマネジメントを学ぶ。そして、執筆活動を通して野球振興にも力を入れる。
一度は戦力外、異例のカムバック 打撃投手や独立L経て
「野球はいろんな人の力によって成り立っていることを、引退して改めて実感した。一度、外から野球を見て学びたいという思いと、野球の魅力を伝えたいという思いがある」。田中さんはプロ14年間で通算1018安打を放ち、歴代5位の302犠打を記録。ヤクルト時代の2007、12年は二塁手としてベストナインを獲得した。
昨秋の引退後、テレビ解説の仕事や子どもたちへの野球教室などを通じて、改めて野球の魅力を感じたという。
自身の経験を伝えるため、昨年10月にツイッターのアカウントを開設。DeNA時代の同僚で、フォロワー数が70万人を超える山崎康晃投手から手ほどきを受けた。「SNSの上級者である山崎選手から、『ツイッターでもプロ野球を盛り上げましょう』と言われ、すごく共感した」
積極的にツイッターを更新すると、読者の反応をすぐに知れる醍醐(だいご)味を感じた。「情報を発信することでファンとの距離も縮まる。現役のころからやっておけばよかった」。今では選手時代の裏話などを1500字程度のエッセーとしてまとめ、有料マガジンで配信するまでに。タイトルは二塁手のポジションと引退後の人生をかけた「セカンド・ライフ」。収益は少年野球大会の運営費に充てている。
「昔から本を読むのが好きで、遠征の移動中に作家の村上春樹さんのエッセー本などを読んでリラックスさせてもらった。そういうものを提供できたらいいですね」。いずれは、書籍化する思いも抱く。
4月から通う早大大学院では、球団経営の仕組みやスポーツと地域のつながりについて学ぶという。野球振興と野球の勉強と野球の指導。「三刀流」に臨む田中さんは「野球選手の引退後はマイナスのイメージを持っている人もいると思う。それを変えたいし、将来的に野球界の力になれるためにしっかりと取り組みたい。僕の夢は続く」と話す。(山口裕起)