私的整理の一種である「事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)」の利用を申請した自動車部品大手、曙(あけぼの)ブレーキ工業は12日、取引金融機関を集めた初の債権者集会を東京都内で開き、借金の返済猶予について全ての取引金融機関の同意を得たと発表した。今後、スポンサー探しや再建計画の策定を本格化させるが、筆頭株主のトヨタ自動車は資金面の支援に慎重な姿勢を示しており、曲折も予想される。
この日の債権者集会では、取引金融機関に組織のスリム化や生産体制の見直し、経費削減といった再建計画の概要を説明。全ての取引金融機関が、6月11日に予定される3回目の集会まで返済を猶予することで同意したという。
ただ、業績の落ち込みは深刻だ。この日、2019年3月期の業績予想を下方修正し、営業損益が4億円の赤字、純損益は192億円の赤字になる見通しだと発表した。昨年5月時点では営業損益は75億円の黒字、純損益は20億円の黒字と予想しており、大幅な赤字に転落する。米ゼネラル・モーターズ(GM)からの大口受注を逃して売上高の5割弱を占める米国事業が苦境に陥った。米国工場などを減損処理したほか、将来の利益を前提に税金の前払い分を資産に計上する「繰り延べ税金資産」を取り崩したことも響いた。
14年3月期に26・4%あった自己資本比率は、18年12月末時点で4・6%まで下落。18年4~12月期の決算短信に、企業としての存続に疑義が生じたことを示す「継続企業の前提に関する注記」がついた。荻野好正副社長は記者会見で「(主力顧客から大型受注を逃して)今後数年かけて徐々に売り上げが減る」との見通しを示した。経営再建に向け、抜本的なコスト削減や経営体制の見直しを迫られる可能性もある。
曙ブレーキは車のブレーキの摩擦材などを扱う独立系の部品メーカー。1月29日に事業再生ADRの利用を申請し、取引金融機関に借入金の元本返済の一時停止を求めていた。(友田雄大、初見翔)