イスラム教を基礎とした厳格な政治体制のもと、女性の権利が大きく制限されるイランでは、慣習によって男性サッカー会場への入場が禁止されている。最近、男装した女性が入場に成功したことが話題となり全面解禁への世論が高まっているが、バスケットボールの現場では一足早く緩和の波が来ているようだ。
点取り屋躍動、強豪イラン撃破 バスケ日本がW杯へ前進
腕に毛をはり…股間にパフ イラン女性、男装観戦の裏技
首都テヘランのアザディーバスケットボールホールでは21日、男子のワールドカップ(W杯)アジア地区2次予選として、日本対イランの代表戦が開催された。イランは世界ランキング26位につけ、オセアニアを含むアジア地区では豪州に次ぐ強豪。サッカーほどではないが、一定の人気があり、会場外には観客の列ができていた。
そのなかには、髪の毛を隠すヒジャブを身につけた女性たちの姿も。3歳でバスケットを始め、高校を卒業したばかりというイラ・KHさん(18)は、友人と2人で観戦にやって来た。「代表戦はすごくわくわくする。生で見るのは初めてで、この日をずっと楽しみにしていた」と待ちきれない様子だった。
「サッカーの流れもあって…」
イランのメディアによると、女性がバスケット男子の試合会場に入れるようになったのは、つい3カ月ほど前のこと。5年前からバスケットやバレーボールを取材している女性ジャーナリスト、キアナ・シャドルーさん(27)は「サッカーの流れもあって、イランバスケット協会の態度が変わった」と話す。
シャドルーさん自身はこれまでも報道関係者として現場に入れていたが「私と同じ景色を女性観客が見られないことを残念に感じていた。女性の応援も、代表の力になるはず」と歓迎する。
ただ、まだまだ課題もある。この日会場に集まった約2千人のうち、女性観客は約400人。だが、女性用トイレは施設に整備されておらず、男性と共用せざるをえない状況だった。客席も完然に男女別にされていて、男性と隣り合って見ることは許されていない。
夫と10歳になる息子と観戦に訪れたサモネ・ハイヤットさん(37)は、1人で客席に座った。「本当は家族3人で見たかったけれど、仕方ない」と少し寂しげだ。夫と旅行した中国では2人でサッカー観戦をしたことがあるといい、「バスケットもサッカーも、早く女性が当たり前に見られるようになればいいなと思います」と話した。(テヘラン=松本麻美)