重度知的障害の男性が、施設から無断外出後に亡くなった事故をめぐり、遺族が施設側の過失責任と「命の価値の平等」を訴えた訴訟で、名古屋地裁(末吉幹和裁判長)は、「安全配慮や注意義務の違反はなかった」として、遺族の請求を棄却した。
男性は鶴田早亨(はやと)さん(当時28)。兄の明日香さん(39)が2014年8月に提訴した。22日の判決によると、早亨さんは愛知県安城市の施設で13年3月22日、職員が目を離した隙に、開放状態の扉から外出。約1キロ離れたスーパー店内で、ドーナツを口に詰め込み、のどに詰まらせて亡くなった。遺族側は、扉を開放していた過失に、職員が目を離したことが重なり事故が起きた、と主張した。
末吉裁判長は判決で、出入り業者らが扉を開いた可能性がある、と指摘。その上で、早亨さんが過去に無断外出したことがなく、目を離したのは数分程度だったことなどから、「外出に気づかなかったとしても、違反は認めがたい」と判断した。
一方、「健常者と障害者の命の価値は平等だ」とする遺族側の主張については判断しなかった。明日香さんは判決後の会見で、「結果は残念。ここでは終われない」と控訴する意向を示した。