タイの発電所建設をめぐり、現地公務員に賄賂を渡したとして、不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)罪に問われた発電機器メーカー「三菱日立パワーシステムズ」元幹部の判決で、東京地裁は1日、錦田冬彦・元執行役員(63)に懲役1年6カ月執行猶予3年、辻美樹(よしき)・元部長(57)に懲役1年4カ月執行猶予3年(求刑はともに懲役1年6カ月)を言い渡した。
昨年6月に始まった司法取引制度が初めて適用された事件。捜査に協力した同社は不起訴となった。判決で任介(とうすけ)辰哉裁判長は、2人が果たした役割の大きさを踏まえ、「同社が刑事訴追を受けず、2人が起訴されたことが不当とはいえない」と指摘した。
判決によると、2被告は火力発電所の建設資材を現場に持ち込めなくなったトラブルを解決するため、2015年2月、タイ運輸省港湾局幹部に現地通貨で4千万円相当の賄賂を渡した。判決は「渋々、賄賂を提供した経緯は一定程度考慮できるが、贈賄が許される余地はない」とした。
2被告は起訴内容を認めていた。元取締役の内田聡被告(64)は無罪を主張し、公判が続いている。