においが引き起こす「好き」「嫌い」の感情や行動を決める受容体の仕組みを、東京大の研究チームがマウスの実験で解明した。英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(電子版)で発表した。
マウスは約1100種類、ヒトは約400種類の嗅覚(きゅうかく)受容体を持つ。1種類のにおい物質は、複数の受容体を活性化し、好き嫌いなどの行動につながるとされているが、においと行動の関係に個々の受容体がどう関わっているかは分かっていなかった。
チームは、「テトラデセノール」と、香料に使われて雄マウスが好む「ムスコン」というにおい物質に着目。それぞれの物質によって活性化されるマウスの受容体(テトラデセノールは3種類、ムスコンは2種類)を遺伝子操作で働かないようにしてから、においを嗅がせた。
二つの穴から2種類のにおいを吹き出し、鼻を突っ込んでいる時間が長い方を「好き」とする実験と、ケージににおい物質を置いて遠ざかると「嫌い」とする実験を行って調べたところ、「テトラデセノール」は、3種の受容体のうち一つは「好き」の行動を決めているが、他の二つは「嫌い」の行動に関係していることが分かった。3種とも機能する通常マウスでは、においの濃度の違いで好き嫌いが分かれた。
「ムスコン」では、2種の受容体がどちらも「好き」という行動を決めていることが明らかになった。
チームの東原和成(とうはらかずしげ)教授(農学生命科学)は「ヒトが求める様々なにおいと受容体の関係が分かれば、食品や香料開発に生かせる」と話している。(小林舞子)