1971年、東京都多摩市で入居が始まった多摩ニュータウン(NT)。計画的に整備されたエリアに集合住宅が並ぶ街は、子育て世代の憧れの地だった。あれから約半世紀――。高齢化に直面した街で模索が続く。
老い楽しむ歌、団地カフェ満席 人影消えた街、交流の場
若者回帰「脱オールドタウン」 AIだけでない再生の鍵
1月下旬の午前8時前。吐く息が白い。
多摩市立東落合小学校の近くにある公園に、登校前の6年生4人が集まってきた。公園のそばには、エレベーターがない白色の5階建て集合住宅が連なる。
児童たちは1棟の階段をのぼり3階へ。呼び鈴を鳴らすと女性(78)が顔を出した。「いつもありがとう。勉強を頑張ってね」。女性はそう言うと、可燃ゴミ袋を手渡した。
ゴミを捨てるには、1階まで下り、そこから数十メートル離れた集積所に持っていく必要がある。女性は笑顔で言った。「体が弱ってきた住民が多い。助かるし、何よりも元気をもらっています」
東落合小が2013年から続けるゴミ出しボランティアだ。東日本大震災を機に、被災時に避難所になる学校として、地域との絆を深めたいという意識が高まった。週2回、6年生が数人の班に分かれて高齢者宅を訪ねる。
この活動は今年度、ボランティア活動を普及促進させる社会教育団体「修養団」(渋谷区)からボランティア奨励賞・文部科学大臣賞を贈られた。全国の小中高校などの応募93件の中で最高賞だ。
贈呈式に出席した佐藤聖香(きよか)さん(12)は「高齢者に感謝されると励みになる」と活動を振り返った。祖父母とは一緒に住んでおらず、お年寄りと会うのが楽しいという。「道で会ったら声をかけ合うようになった。地域での支え合いはあたたかい気持ちになれる」
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多摩NTでは、急速に高齢化が進む。1989年に約5%だった多摩市内の高齢化率は昨年は約28%。一方で、高齢者を支える動きが広がっている。
市内の永山、貝取両地区の2カ…