Jリーグと日本フットボールリーグ(JFL)を通じて今季初めて、サッカーの男子チームを指導する女性監督が誕生した。JFLに初昇格した鈴鹿アンリミテッドFC(三重)のミラグロス・マルティネス・ドミンゲス氏。スペイン出身の33歳は「海外で男子チームを率いる夢がかなった。挑戦を楽しんでいるし、自信はある」と6位以上を目標に掲げる。
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現役時代はセンターバックで、指導者は2007年から。スペイン女子リーグ、アルバセテ・バロンピエの監督兼GMとしてチームを1部昇格に導いた実績がある。日本のS級ライセンスに相当する、UEFA(欧州サッカー連盟)のプロライセンスを持つ。
鈴鹿は、前監督の退任に伴い、後任人事に着手した。しかし、J1から数えて4番目のカテゴリー所属チームに金銭面で余裕はない。「何か新しいことを」という話題性とともに、男性指導者と同じ能力がありながら機会を得にくい女性監督を招請することにした。
しかし、あてはなく、インターネットの検索エンジンに「サッカー 女性 監督」と打ち込んだ。候補を絞り込めず、結局、スペイン男子3部などで監督経験のあるJリーグ特任理事の佐伯夕利子氏から情報を得たという。
メールのオファーをマルティネス氏は快諾した。成年男子を指導するのは初めてだが、1月下旬から実際に指導してみて、「体力面以外では、戦術、戦う上での準備面などで違いはない」ときっぱり。日本人の技術、規律の高さ、チームワークの良さは、スペインより優れていると感じたという。攻撃的で見ていて楽しいサッカーが理想だ。
スペインのサッカー界でも女性指導者は珍しいという。極東での男子チーム指導は母国の関心も高く、スペインメディアの電話取材も多いという。「女性の社会進出という点でもチャンスをもらえた。他の女性指導者に希望を与える意味でも頑張りたい」と話す。
アジアに足を踏み入れるのも初めて。「人も文化も何も分からなかったが、来てみるとイメージ以上に日本の皆さんのリスペクトを感じられた。幸せ」。「行かないで」と涙を流した母も、テレビ電話越しの娘の笑顔を見て、今では安心して応援してくれている。
JFLは16チームが2回戦総当たりで競う。開幕の17日、鈴鹿はアウェーでMIOびわこ滋賀と対戦する。(金子智彦)