1989年6月に中国・北京で民主化運動が軍に鎮圧された天安門事件をめぐり、犠牲となった学生の母親らでつくるグループ「天安門の母」がこのほど、犠牲者の名誉回復や当時の指導者への責任追及を求める公開書簡をインターネット上で発表した。
5日から始まった全国人民代表大会(全人代)に合わせ、習近平(シーチンピン)国家主席ら共産党指導者に宛てた。
今年は事件から30周年になるが、中国政府は当時の民主化運動を「動乱」や「政治風波(騒動)」との評価を変えておらず、詳細も明らかにしていない。中国内では事件の情報は厳しく規制され、報道も禁じられている。
127人の署名を添えた書簡は「大虐殺という鉄の事実は歴史に刻まれており、どんな大きな権力でも書き換えることはできない」と指摘。習氏が唱える「中国の夢」という言葉を引用し、事件があった6月4日を記念日と定めるなどして「愛国民主運動」の犠牲者を追悼することが「天安門の母」たちの夢だとした。
メンバーは今も当局から厳しく監視されている。多くの人が高齢となり、昨年は5人が死亡。書簡は「私たち遺族がいなくなっても、必ず引き継ぐ人たちがいる」と訴えた。(北京=延与光貞)