北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キムジョンナム)氏がマレーシアのクアラルンプール国際空港で殺害された事件で、殺人罪に問われた実行役の女2人の公判が11日、クアラルンプール近郊の高等裁判所で開かれた。裁判所は検察の求めに応じ、インドネシア人の被告について殺人罪の起訴を取り下げると決めた。
取り下げになったのはシティ・アイシャ被告(27)。すでに釈放され、今日にもインドネシアに帰国するとみられる。ベトナム人被告については、殺人罪での審議が続くとみられる。
これまで検察側は立証手続きで、捜査員らの証言や現場の監視カメラ映像などから、被告が猛毒「VX」を含む液体を正男氏の顔に塗りつけたなどとして、殺意は明確だと主張。弁護側は「被告らは北朝鮮の男から『いたずら番組の撮影』と聞かされていた」などと無罪を訴えていた。裁判所は今回、検察側の立証内容が殺人罪適用には十分でないと判断したとみられる。
事件は2017年2月に発生し、2人の裁判は2017年10月に始まった。事件後、捜査当局は女2人を起訴し、指示役とされる北朝鮮の男ら8人の名前を公表した。ところが北朝鮮の8人は事件後に全員出国。真相解明が難しくなっていた。(クアラルンプール近郊=乗京真知、守真弓)