虐待を受ける子どもだけでなく、する側の保護者にも目を向け、再発を防ごうというプログラムが広がり始めた。虐待の原因を自ら振り返ったり、コミュニケーション方法を習得したりすることで、子どもへの暴力を食い止めようという取り組みだ。
特集「小さないのち」
「私を苦しめているのはこの子だ」。関西地方に住む福祉職の40代女性は、専業主婦だったとき、夜中に当時3歳の長男の寝顔を見て憎しみがわいてきた。我が子が憎くて仕方なくなった。二つ下の次男を身ごもったころから、長男が言うことを聞かなくなった。あるとき、泣いている次男の顔を長男が枕に押さえつけていた。「頭に血がのぼった」という女性は怒鳴り、長男に初めて手を上げた。
同い年の夫は働きづめで家事と育児のほとんどは女性が担った。いら立ちから1日1回は頭をたたくか、お尻をたたくようになり、怒鳴り声も隣近所に聞こえるほどになっていった。
「殴るよ!」
「殴るんやったら殴ったらいいねん」
長男にそう言い返されて、たたく手は「パー」から「グー」に。長男が泣かないと、余計に腹が立ち、憎しみしかわいてこなかった。夫は「たたくのもしつけのうち」という考えで、親族も「たたくのなら、目立たないところに」。歯止めがかからなくなった。
住んでいる自治体の相談窓口「保健センター」に駆け込んだ。「少し離れた方がいい」と言われ、保育園に預けるように。それでも降園の時間が近づくと、「帰ってこんかったらいいのに」と思った。
「このままいったら……」。子どもの虐待死事件がひとごとと思えなくなっていた。悩んでいたとき、知人に親支援プログラムを紹介された。「自分が変われるなら」。すがるような思いで申し込んだ。
「長男が憎い」。こう話すと、…