2月27日、宮城県石巻市の郊外に一軒家が完成した。ヒノキやケヤキなど8種類の木をふんだんに使い、光が差し込む吹き抜けにはかつての古里の写真が掛かっている。大工の三條将寛(まさひろ)さん(29)が父の経三郎(きょうさぶろう)さん(67)と建てた。両親、兄と暮らす新しい住まいだ。
周りには震災で家や土地を失った約370世帯が住む。三條さんもその一人。20軒近い被災者宅の新築を優先し、自分たちは後回しにしていた。
将寛さんは8年前、東北工業大学建築学科の3年生。仙台市内に下宿していた。母のすみゑさん(60)から「(家にいた)泰寛と連絡が取れない」とメールが届いた。3歳下の弟だ。雪が舞う中、石巻へ向かって自転車をこいだ。
当時の自宅があり、水没した長面(ながつら)地区まで父や地元の約20人とたどりついたのは震災4日目。助かった30人ほどの人たちと喜び合うのもつかの間、1人が言った。「大工さんとこの三男、亡くなったよ」
寺の敷地に4人の遺体が並べら…