グニャグニャにへし折られたパイプ。気にとめる人もない食器の数々。うち捨てられた七福神の置物やぬいぐるみ……。宮城県石巻市で鉄工所を営む高橋力蔵さん(72)が、津波で流された街の跡で拾い集めてきた。私財をつぎ込んで、一風変わった展示施設をつくる。あの震災を忘れてほしくないから。 特集:3.11 震災・復興 8年前、石巻市築山1丁目の自宅で津波に遭った。大きな揺れで工場から戻った数分後、黒い水の塊に襲われた。階段を駆け上がり、家はかろうじて持ちこたえた。家族4人、2階で数日を過ごした。 水の流れの中、助けを求めて叫ぶ声が忘れられない。震災後しばらくは海に近づけなかった。 3年が過ぎ、かつて仕事で通った南浜町に行ってみた。住民約400人が犠牲になり、石巻市で最も被害が大きかった地区だ。雑草が生い茂る足元に、瀬戸物の皿の端がのぞいていた。「食器を使っていた家族や人の結びつきを教えてくれているみたいでさ」。ヘドロが詰まった水差しにかわいい花の絵が描いてある。「頑張って残ったよ」と言っているようだった。 毎日自転車で通い、気になった… |
物たちが語る震災の記憶 石巻の男性、拾い集めて展示へ
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