東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島各県の42市町村の過半数が、被災時の対応や復興の過程で作成した「震災公文書」の一部を既に廃棄したか、廃棄した可能性がある。朝日新聞の調査で判明した。当時のメモや写真なども10市町村が保存していなかった。保存のルールが統一されていないのが原因で、対策が必要になりそうだ。
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公文書管理法は2011年4月施行。内閣府は翌年、震災関連公文書を「国家・社会として記録を共有すべき歴史的に重要な政策事項」として適切な保存を国の機関に通知した。ただ通知の対象に地方自治体は含まれていない。
朝日新聞は1~2月、42自治体にアンケートした。市町村は公文書を、▽1、3、5、10、30年ごとに保存期限を決める▽永年保存する――など、同法や内部規程に沿ってそれぞれ管理している。保存期限が来たら、永年保存や延長、廃棄にするか決める。
42市町村に保存期限が過ぎて廃棄した震災公文書があるか尋ねたところ、6市町村が「ある」、16市町村が「可能性がある」と回答。国からの通知文書やボランティア名簿などを廃棄していた。「保存期限がきた」(宮城県多賀城市)、「全て保管するスペースがない」(福島県飯舘村)などを理由に挙げた。
今後、保存期限が過ぎると廃棄する震災公文書があるかを問うと、「ある」は12市町村、「未定」は17市町村だった。
公文書の管理を各部署に任せている市町村も多く、全庁的な判断の有無とその時期が重要になる。例えば宮城県気仙沼市は昨年になって「当分の間は捨てない」と定めたが、それ以前は捨てていた恐れがある。一方、廃棄した文書が「ない」と回答した岩手県釜石市は12年、「11年度以降の震災公文書は全て永久保存」と決めており、早期の判断で対応が分かれた。
また、市町村が公文書として取り扱わなくても、職員の手控えメモやホワイトボードの記録、写真なども震災の重要な記録であるほか、当時の対応を検証できる資料だ。8市町村は「保存しており、当面保存を続ける」だったが、10市町村が「保存していない」と答えた。(井上充昌)
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