欧州季評 ブレイディみかこ
英国で「ブロークン・ブリテン」という言葉が使われ始めたのは10年以上前だった。10代のシングルマザー、幼児虐待、ドラッグやアルコールの問題、暴力的なギャング・カルチャーなど社会的荒廃を意味する言葉としてそれは登場した。2010年の総選挙で保守党は「ブロークン・ブリテンを修復する」と言って戦い、政権交代を起こした。
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やがて「ブロークン・ブリテン」は政治的荒廃をも意味する言葉になった。議員のスキャンダルや政治腐敗、不正選挙、緊縮財政による警察やNHS(英国民保健サービス)の機能不全など、底が抜けたとしか言いようのない政治状況が「ブロークン」と形容されるようになった。
ブレイディみかこ
1965年生まれ。保育士・ライター。96年から英国在住。共著に「そろそろ左派は〈経済〉を語ろう」、著書に「子どもたちの階級闘争」など。
そして最近、耳にする言葉が「ブロークン・ヨーロッパ」だ。この言葉で特集を組んだニュー・ステイツマン誌に寄稿したケンブリッジ大学のブレンダン・シムズ教授は、現代の欧州連合(EU)の状況を、約500年前に欧州で宗教改革の嵐が吹き荒れた時代になぞらえている。
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