東京電力福島第一原発事故で福島県から千葉県に自主避難した6世帯19人が、国と東電に計約2億5千万円の賠償を求めた訴訟の判決が14日、千葉地裁であった。高瀬順久裁判長は東電に対して、4世帯9人に計約510万円の賠償を支払うよう命じる一方、国については賠償責任を認めず、原告の請求を棄却した。
原告側は、国の地震調査研究推進本部が2002年に発表した「長期評価」が、三陸沖から房総半島沖のどこでも津波を伴う大地震が起きる可能性を指摘していたことから、「津波を予見して対策を講じることはできた」と主張。国が津波を予見し、東電に対して安全対策を取らせる責任があったにもかかわらず、怠ったと訴えていた。これに対し、国は長期評価について「信頼度は低く、具体的な根拠がない」などと反論していた。
今回の訴訟の原告はいずれも、避難指示の対象区域外から自主的に避難した人たち。「避難指示が出されなかった地域からの避難者も、地域のつながりや生活基盤を壊された」として、「ふるさと喪失慰謝料」を求めていた。一方、東電は「復興は進んでおり、自主避難者はふるさとを喪失していない」などと主張していた。
原発事故を巡る集団訴訟は全国で約30件起こされ、一審判決は今回で9件目。これまで判決を言い渡された8件はいずれも東電の責任を認めており、国が被告となった裁判では、17年9月に千葉地裁で判決が言い渡された訴訟を除き、国の責任も認めていた。(寺沢知海)