サッカーでは東南アジアの台頭が著しい。背景には、ここ20年にわたって日本から延べ100人を超える指導者がアジア各国で年代別代表監督や指導者養成などに携わってきたことがある。言葉の違いをどう乗り越え、また、日本のサッカーは外からどう見えるのか。ミャンマーで15歳以下(U15)代表を指導する古賀琢磨監督(49)に聞いた。
今年初めにアラブ首長国連邦(UAE)で開かれたアジア杯で、ベスト16にタイ(世界ランク115位)とベトナム(同99位)が勝ち上がった。ベトナムはヨルダン(同97位)を退けて8強入り。準々決勝で日本(同27位)に0―1で敗れたが、侮れない相手であることを示した。
磐田や清水などでDFとして活躍した古賀監督は2003年シーズンを最後に引退後、指導者に転身。日本協会の海外派遣事業に応募して、11年からシンガポール、東ティモールなどを渡り歩いた。17年からミャンマーで育成年代の指導に就いている。
もともと、本人も英語が不自由だったというが、「そもそも、指導する子どもたちが英語を理解できるとは限らない」という。
現在のミャンマーでの指導歴は丸2年。地元コーチを間に入れたり、身ぶり手ぶりを交えたりして、選手がサッカー用語は理解できるようになった。「現地語を使えたほうがいいけど、オープンマインドで積極的にコミュニケーションを取ることで何とかなる」
一口に東南アジアといっても、文化も国民性も様々だ。「例えば、ミャンマーの子どもたちは控えめでシャイ。自己主張をしない分、チームプレーはできる」そうだ。
東南アジアに共通する課題は「財政面」と指摘する。ミャンマー協会では技術委員長をベルギーから迎えているほか、各年代にブルガリア、スペイン、ドイツと多国籍の指導者を置いているが、継続できるかは資金次第。「きちんとした指導を受けた経験がないが、潜在能力は高い。20~30年前の日本と似たレベル」という。
一方、外から見た日本サッカーについては、「過保護すぎないか」と疑問を投げかける。日本からチームを迎えることもあるが、「指導者がそろい、普段の練習環境が良すぎることで選手が変化に適応できないように映る」という。
そう語る古賀監督もタフだ。単身赴任での海外生活は9年目に入った。「海外に出ないとわからないこともある。チャンスがあるなら出たほうがいい」と海外での指導を勧めている。
U18東南アジア選抜の監督も
古賀監督は、6月22日に福島・Jヴィレッジである国際親善試合で、U18東南アジア選抜監督を務め、U18東北選抜に挑む。3月中旬の記者会見で、「多様な個性を生かしたい」と抱負を語った。(潮智史)