(23日、選抜高校野球 星稜3-0履正社)
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優勝候補対決。4万1千人が見つめるマウンドで、星稜の奥川はワクワクしていた。「一番楽しめた」と振り返るのは、七回2死の勝負だった。
1ボール2ストライクから、鋭いスライダーが外角に決まる。履正社の4番井上のバットは動かない。いや、動かせなかった。見逃し三振。「相手の逆をつくいいボールだった」と奥川。投球術が勝った。
強打を誇る履正社が狙っていたのは、奥川の武器の速球。マシン打撃で160キロ近い球を打ち込んできた。一回、奥川が直球で様子を探ると、初球から強振してきた。
挑まれた力勝負。奥川は「駆け引き」を仕掛けた。初球にスライダーを増やし、狙いをずらす。追い込むと、直球でも変化球でも三振を奪っていく。全4打席で凡退した井上は「自分のなかで(狙い球を)迷ってしまった」と悔やんだ。
この投球術は、「負けの経験」から生まれた。昨春の選抜は準々決勝で散った。エースになった夏の甲子園は2回戦敗退。優勝候補と注目された秋の明治神宮大会も決勝で敗れた。150キロに迫る直球に高校生離れした変化球があっても、勝てなければ意味がない。だからこの大会は「大人の投球」をテーマに、勝負にこだわった。
一回に記録した自己最速の151キロを「球速は気にしていません」と言い、毎回奪った三振には「17個もとったんですか」と他人事のよう。被安打3で難敵を完封し、「プラン通りの投球ができました」。涼やかな笑顔に自信がにじんだ。(小俣勇貴)
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○山瀬(星) 一回の先制打を含む3安打に「奥川を援護できてよかった」。捕手としても完封勝利を導き、「構えたところに球が来て楽しかった」。
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○知田(星) 一回は右前安打で出て先制の本塁を踏み、七回は左翼へ適時打。2年生は「最初の安打で楽になった。適時打はつなぐ意識でした」。
「プロに近い投手」
●野口(履) チームでただ一人の複数安打。「(奥川は)今まで対戦した中で一番いい投手だと思う。プロに近い投手と対戦できていい経験になった」