国土交通省中部地方整備局は25日、中部空港(愛知県常滑市)の隣接海域に名古屋港の浚渫(しゅんせつ)土砂を埋め立てる事業計画案を公表した。地元政財界はここに第2滑走路の建設を目指すが、実現には課題がある。
事業計画案は、この日公告された環境影響評価の準備書に盛り込まれた。名古屋港の航路を維持するために海底をさらう土砂を処分するため、空港西側と南東側の計約290ヘクタールを5工区に分けて段階的に埋め立てる。西側は約15年かけて約480メートル沖合に拡張され、第2滑走路の候補地と期待される。
中部地整は「埋め立てはあくまでも港湾事業で、第2滑走路とは無関係」とする。だが愛知県の大村秀章知事は昨年7月、この土地を活用してリニア中央新幹線が開業する2027年までに第2滑走路建設を目指す考えを表明した。
ただ、埋め立て事業の実施には漁業者の同意が必要だ。愛知、三重の両県漁連は空港西側沖が伊勢湾で屈指の好漁場であることなどを理由に、慎重な姿勢を示している。両漁連によると、中部地整は「漁業経営実態調査」への協力を求めているが、三重県漁連は「容認すれば事業化につながると考える人もいるので、慎重に協議している」と態度を保留。愛知県漁連は「調査には協力するが、事業の受け入れを決めたわけではない」とする。
また、第2滑走路を建設するには、国が空港の基本計画を変更する必要がある。国交省航空局の担当者は、空港会社が開港時の建設費などの負債約3292億円(17年度末)を返済中であることや、中部空港の発着回数をさらに増やす必要があることなどを課題に挙げている。(堀川勝元)