東京電力福島第一原発事故で飛散した大量の放射性セシウム。事故から8年近くが経ち、福島県の約7割を占める森林では、ほとんどが土壌にとどまっていることが明らかになってきた。空気中に浮遊するセシウムを植物が取り込む仕組みも、徐々に解明されつつある。
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9割超が土壌にとどまる
福島県の森林の大半は、除染が進んでいない。除染済みの宅地や農地に影響を与えていないか、各地で研究が進んでいる。
日本原子力研究開発機構は、2013~16年にかけて川内村や川俣町の森林を調査した。針葉樹と落葉樹の森の斜面で、雨水などで流れ出るセシウムを調べた。その結果、セシウムの流出は川内村のスギ林で0・05~0・48%、川俣町の雑木林の緩やかな斜面で0・02~0・08%、急斜面でも0・15~0・73%にとどまっていた。年ごとの大きな増減もなかった。
原子力機構福島環境安全センターの飯島和毅グループリーダーは「森林土壌にはセシウムを吸着する鉱物があり、地表から深さ5センチ程度に長きにわたってとどまっている」とみる。林野庁の資料によると、葉や枝に付着していたセシウムは落葉や降雨によって地面に移り、土壌にとどまる割合が9割以上になっている。
1950~60年代に米国や旧ソ連などが相次いで行った大気圏核実験で日本にも飛来した放射性セシウムの動態から、地中に取り込まれる速度も推計できる。
森林総合研究所の三浦覚・震災復興・放射性物質研究拠点長らは福島の事故前の08年、全国316地点の森林土壌について、それぞれ深さ30センチまでの放射性セシウムの蓄積を調べた。分析の結果、核実験で降ったセシウムは約半世紀で平均8・8センチほど地中に浸透していた。
三浦さんは「50年前の核実験によるセシウムの動きから、福島事故によるセシウムの動きも予測できる」と話す。
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