26日の第1試合で筑陽学園(福岡)と戦った福知山成美。部員の中には、昨年の西日本豪雨で鉄道が運休して一時通学できなくなる球児もいた。車の送迎などで野球を続けさせてくれた両親に感謝しながら、被災した地域の人のためにもと、全力プレーで臨んだ。
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部員63人中19人が自宅から通う。三塁手の佐藤翔平君(3年)は京都府舞鶴市の自宅から、学校のある福知山市まで電車で1時間以上かけて通学する。昨年7月5日から降り始めた西日本豪雨は、両市など京都府北部にも土砂崩れや床上、床下浸水などの被害をもたらした。通学で使うJR舞鶴線は運休し、並行する国道27号も通行止めに。迂回(うかい)道路も通れなくなった。7日予定の夏の京都大会の開会式は9日に延期された。
初戦が13日に迫るなか、佐藤君は自宅で一人、素振りやランニングで汗を流した。「大会も近い。早く学校で練習をさせたい」と、父直明さん(55)と母照美さん(50)は8日から、一部区間で開通した高速道路を使って車で送迎することにした。予想以上の渋滞で、通常は片道45分ほどの道のりに4時間かかった。
開会式がある9日は午前5時に自宅を出発。佐藤君は車窓から、土砂崩れの現場で必死に土を片付ける人を見た。「地域の人が大変な思いをしている。自分は野球で頑張らなあかん」と思ったという。
豪雨被害を受けた京都府北部にとって、5年ぶりとなる福知山成美の甲子園出場は明るい知らせだった。
「自分一人では何もできなかった。時間を削ってくれた両親に感謝し、グラウンドを全力で走り回って災害を受けた地域を元気づけたい」と話していた佐藤君。同点とされた直後の五回、外角低めの変化球を伸ばした左手1本でとらえて、しぶとく左前安打とした。ただ、相手の緩急をつけた投球に的を絞れず、出塁したのはこの打席だけ。「ヒットは喜んでもらえると思うけど、先頭打者の役割を果たせなかった。夏こそ甲子園で思い切りよくバットを振れるようになる」と巻き返しを誓った。(高橋豪)