「新元号に変わるのは寂しいけど、新しい時代を切りひらく、これからも平穏な暮らしができる元号になってほしい」。山口県山陽小野田市にある「平成町(へいせいちょう)」(167世帯351人)の自治会長、松冨博さん(71)はそう願いながら、新元号の発表を待つ。
平成町(へいせいちょう)は1993(平成5)年11月に誕生した新しい大字(おおあざ)。元々は「小野田」という大字の一部だったが、世帯数が多くて郵便物の配達が困難な地域とされており、旧小野田市が「小野田」の中の若生(わかおい)町自治会と幸(さいわい)町自治会に対して、住所表記の変更を提案。住民が出し合った約70の案から絞り込み、最終的に1世帯1票の投票で決めた。
当時、市総務課の担当係長だった渡辺津波さん(63)によると、投票にかかったのは、当初案から住居表示として不適切なものや他の地名と似たものを除いた8案ほど。二つの自治会名を合体させた「若幸町」などを抑え、「平成町」が最多の票を集めた。「最初に聞いたときは、元号を住所表記に使っていいのか不安があった」と振り返る。
松冨さんによると、住民から不満の声は出なかったという。「平成の名にふさわしく、町内で大きな災害は起こらずに平穏な暮らしができた」。元号が変わっても、そこは変わらないでほしいと願っている。(二宮俊彦)