山口県で、餅まきが最も熱い季節を迎えている。23日には餅まきの餅を拾う「世界選手権」が開かれ、国内外の猛者が集う。餅まきに補助金を出す自治体もあり、県はイベントで毎日1千個の餅をまいた。めざすは餅まきの聖地――。
山口市中心部から約40キロ山あいに入った阿東ふるさと交流促進センター。ここで23日、第8回餅ひろい世界選手権が開かれる。
「決勝に残る人たちは、ただ者じゃない」。主催のまちづくり団体「NPOあとう」の椎木耕司理事長(48)は言う。
10アールの田んぼが会場で、軽トラックの荷台からまく餅を10分間にどれだけ拾うかが勝負。「小学生」と「中学生以上」の部があり、予選で上位に入った人が決勝に進む。募集定員250人が毎年すぐ埋まる人気イベントだ。留学生からの応募もある。
すばやく拾うには技が必要だ。投げる人のくせを見抜き、目線で餅が落ちる位置をよむ。のけぞり、跳躍し、スライディングして我先にと餅をつかむ。ときには体がぶつかり合い、怒号も飛び交う激しい「競技」だ。参加者は安全のため、「餅」と赤く書かれたヘルメットをかぶり、拾った餅を入れるため、コメ袋でできた専用エプロンを体にまく。餅は、会場近くの田んぼで育てたコメ120キロが原料となる。
毎年出場する杉井俊介さん(31)=山口県防府市=は「恥じらいを捨てることがコツ。無我夢中です」。4年前は餅をまく人の名前を連呼し、自分の近くに投げてもらうよう仕向ける「心理戦」で2キロを拾い、初優勝した。拾った餅は持ち帰れるため、「この年は2カ月間、毎日朝ごはんが餅だった」。
総務省によると、昨年の県庁所在地別の餅購入量(2人以上の世帯)は、山口市が1471グラム。全国平均の約6割で決して多くはない。どういうことだろうと問うと、椎木さんは「山口では餅は買うものじゃない。拾うものなんです」と即答した。
とはいえ、餅まきは、人口減少やライフスタイルの変化などで見かける機会が減っている。次世代への継承が課題だ。椎木さんによると、手軽さと安さから、菓子の代用も増えているという。「でも、やっぱり餅まきは特別。餅まきで地域を盛り上げていきたい」
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餅まきの由来は、新居の上棟祝いなどの神事とされる。昔は米をまき、江戸時代にはお金や餅をまくようになった。餅まきの由来をまとめた福島県神社庁によると、屋根の上からまくことで、方位神へのお供えや福を分ける行為としたという。
五穀豊穣(ほうじょう)に感謝する祭りの季節、秋が1年のうちで餅まきのピークだ。だが、山口県では季節を問わず、餅をまく機会がある。
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