鹿児島市の繁華街・天文館で3日正午すぎ、市電の電停にミツバチが大量に発生した。横断歩道の中央で車の進入を防止するブロック塀に密集したため、飛び回るハチに戸惑う通行人らで現場は一時騒然とした。
市電運転士などから連絡を受けた交通局職員が午後1時前、殺虫スプレーを片手に現場に到着した。だが「役にたたん」。別の職員が携帯型の送風機で吹き飛ばそうとしたが、ハチが飛び散り、逆に危ないと断念した。通行人らは飛び回るハチを手で払いながらも「こんなところで、こんなの初めて」と遠巻きに「捕りもの」を見守った。
午後2時ごろ、養蜂家の高野裕志さんが到着。密集したハチの中にいた女王蜂をつまみだし、持参した巣箱に入れると、ほかのハチたちが次々と後に続いた。
付近では、3月8日から「天文館みつばちプロジェクト」と称した試みが始まった。高野さんやボランティアらが百貨店や商業施設の屋上で蜂蜜をつくるためにミツバチを育てている。
高野さんによると、屋上と電停のミツバチは同じセイヨウミツバチ。同種は群れの中で新しい女王蜂が現れると、古い女王蜂が群れを出ていく習性がある。今回、電停に集まったミツバチは屋上の巣から出てきた女王蜂と、それに追随した働き蜂の可能性があるという。(野崎智也)
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鹿児島市の天文館に3日昼に現れた大量のミツバチ。その写真を見たミツバチの生態に詳しい玉川大学農学部の中村純教授(養蜂学)は「女王蜂が古い巣を出て新しい巣をつくる『巣分かれ』と呼ばれる現象だろう。ブロック塀で羽を休めていたのではないか」と話す。
中村教授によれば「巣分かれ」をした女王蜂は毎年4月ごろ新しい巣を探すが、都市部でその姿が見られるのは珍しい。女王蜂が休む間、働き蜂が新しい巣となる場所を探し、女王蜂の元に戻って情報を伝える。今回その途中だったのではないか、という。