鹿児島県霧島市牧園町と隼人町にまたがる妙見温泉で、人口密度ならぬ猫密度が高まっている。迷い猫が旅館の看板猫となって、温泉客を癒やしている。写真家7人が撮影したネコ写真展が今月末まで開かれている。
捨て猫のチビ、初詣客お出迎え いまや神社の看板猫
猫城主「さんじゅーろー」 ベンチで昼寝、たまに失踪
写真展の会場となっている宿泊施設「妙見温泉ねむ」(旧妙見ホテル)の看板猫は「ユキ」。雪が積もった昨年2月、玄関のマットにたたずみ、じっと中の方を見ていた。けがをしていたので病院に連れて行った。毛並みは真っ白で、右目が金色、左目は青の「美男子」。支配人の只野公康さん(56)が宿泊のお客さんから「左右で目の色が違う猫は縁起がいい」「入り猫は福を呼ぶ」と言われ、飼うことに。宿泊客にすり寄って来る人なつっこい性格で、チェックアウト時は従業員とともに宿泊客を見送るように座るという。
老舗旅館の妙見石原荘には12年前に迷い猫が現れた。露天風呂近くにちょこんと座っていることが多く「ロブ」と名付けた。顔の模様から歌舞伎役者のようだと言われ、撮影した写真家からは「気品があって宿にあっている」という評も得た。玄関先でじっと客を出迎えるが、気分屋で姿を見せないことも。
田島本館の看板娘は2匹いる。1匹は4年前、近くにある系列の高級リゾート、天空の森の離れ「つばめの巣」で見つかった。ネーミングはその名もずばり「つばめ」で、おっとりとした性格。
2匹目はおちゃめな「すずめ」。2年前、パートの女性が自分のマンション駐車場にいたところを見つけ、連れてきた。交通事故に遭ったのか人に蹴られたのか、横隔膜が破れ、最初は元気がなかったが、病院で手術後、いまはつばめと一緒に元気に動き回っている。2匹とも玄関近くにいることが多く、温泉客が頭や体をなでていくという。
写真展は、妙見温泉振興会の主催。振興会には12の旅館などが加盟するが、このうち7施設に計17匹の猫がいる。温泉ライターで各地の温泉地の猫を取材している西村理恵さん(56)は「猫が多いのは居心地が良いからでは。私が知っている中で妙見温泉の猫密度は日本一と思う」と話す。(大久保忠夫)