野球の第29回U18(18歳以下)ワールドカップ(W杯、韓国・機張(キジャン))に向けた高校日本代表(永田裕治監督)の国際大会対策研修合宿は6日、第2日が奈良県内のグラウンドであり、第1次候補選手として参加している30人が初めて実技の練習メニューに取り組んだ。
ニュースや動画をリアルタイムで!「バーチャル高校野球」
ノックやフリー打撃のほか、特別ルールを用いた紅白戦を2試合こなした。星稜(石川)の奥川恭伸(やすのぶ)(3年)や横浜の及川(およかわ)雅貴(3年)といった選抜大会でも注目された投手が登板。ただ、詰めかけたプロ10球団、メジャー2球団のスカウトから最も注目を集めたのは、東北の公立校から選ばれた右腕だった。
190センチの長身から投げ下ろす球は直球でも、スライダーでも、フォークでも空振りをとれた。大船渡(岩手)の佐々木朗希(ろうき)(3年)は、高校トップクラスの打者を相手に6人全員から奪三振。たった25球で周囲の度肝を抜いた。対戦した横浜の内海貴斗(3年)は、「見たことのない球。直球を『地をはうような』と言うけど、地をはう前にミット(の中)、びびる前にミットでした」と舌を巻いた。
この打席、中日スカウトのスピードガンでは自己最速から6キロ増の「163キロ」を計測。公式戦ではないものの、同じ岩手出身の大谷翔平(エンゼルス)が花巻東高時代の3年夏に全国選手権岩手大会準決勝でマークした高校生史上最速の160キロを上回った。他の数球団でも、160キロ超を記録したという。
ソフトバンクの永井智浩・編成育成本部長兼スカウト・育成部長は、「『すごい』というレベルを超えている。球速の数字どうこうではなく、速いですよ」と感嘆。魅力を問われ、「直球の速さとか変化球のキレとかではなく、スケール感の大きさ。夢がありますよね」と答えた。
練習後の取材では、奥川、及川、選抜王者の東邦(愛知)で主将を務める石川昂弥(たかや)(3年)とともにテレビカメラの前へ。しかし、1人だけ表情がさえない。他の3人が印象に残ったことに、「佐々木君のスピードボール」と口をそろえても、困惑しているようだった。
その理由を淡々と語った。「今日は(投球内容を)あんまり覚えていないんです。緊張して変に力んで、指にかからなかった」。本音なら、末恐ろしい。そして、こうも言った。「(奥川らには)スピードだけしか勝っていないので。コントロールや変化球、自分にないものを持っている。追いつきたい」。東北でのびのびと育った大器が、全国レベルに触れて、さらに磨かれようとしている。(小俣勇貴)