建設コンサルタント会社の元社長が、仕事とは無関係の市民活動を理由に国土交通省の幹部から「公共事業の発注を中止する」と脅され、取締役辞任に追い込まれたなどとして、国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が10日、東京高裁であった。野山宏裁判長は、「民間企業への威嚇」だと判断し、請求を棄却した一審・東京地裁判決を変更し、国に約530万円の賠償を命じた。
判決によると、元社長の男性は、東京湾に海上要塞(ようさい)として造られた人工島「海堡(かいほう)」の保存活動をする団体に所属。2010年に国が海堡の一部を取り壊したことを知り、国土交通省関東地方整備局に保存を求める要望書を提出した。その後、同整備局幹部が別の取締役を呼び出して「国の事業を発注しない」と迫り、男性は取締役の辞任に追い込まれたという。
判決は、国交省幹部の対応を「民間企業の経営や個人の進退に対する、法律に基づかない介入」だと指摘。「請願権」を保障した憲法16条にも違反するとして、男性が受け取れたはずの役員報酬などの賠償を命じた。
国交省は「今後の対応は判決を精査したうえで検討する」としている。(北沢拓也)