国内最大級の築地市場(東京都中央区)を引き継いだ豊洲市場(江東区)が開場して11日で半年がたった。約5700億円かけ、新しい「日本の台所」をめざしたが、取扱量は築地時代より落ち込んでいる。
「築地から豊洲に移り、2割くらい売り上げが減った」。築地市場の1・7倍となる40・7ヘクタールの敷地に、5階建ての水産仲卸売場棟や、青果棟などが立ち並ぶ豊洲市場。鮮魚を手広く扱う水産仲卸「て良」の井上武久さん(81)はぼやく。
スーパーやチェーン店などにアジやイカ、サバなどの大衆魚を1日何十キロと納めており、大口顧客との取引は減っていない。銀座が徒歩圏だった築地から離れ、「小料理屋のような小口の現金客が激減した」と言う。
都は昨年8月、豊洲開場後の5年間で水産物の取扱量を1・6倍の年約62万トンに引き上げるとする計画を作った。豊洲は築地と違って閉鎖型の低温管理施設を持ち、魚介の品質保持に強みがあるほか、加工施設も備えたことでスーパーなどの需要に応えられると期待した。
しかし、開場した昨年10月の豊洲の水産物取扱量は、依然国内最大ではあるものの、前年同月比2・4%減の3万366トン。かき入れ時の12月も同10・1%減の3万4828トンで、今年1月も同4・4%減、2月も同7・2%減と低迷が続く。
築地時代も消費者の魚離れ、海外からの輸入や産直販売など市場を通さない取引が広がり、取扱量は減少が続いていた。ピークだった1987年の約81万トンから半減していた。
周辺の中央卸売市場では、大田や横浜も前年割れが続くが、足立や川崎のように前年と同水準を保つ市場もある。豊洲の取扱量減少の原因について、都の担当者は「漁獲高の減少や魚離れなど複数の要因が絡まっており、現時点で特定は難しい」と話す。
一方で、業者や利用客の不満が…