現存するのは世界に3点しかないとも言われる「曜変天目(ようへんてんもく)茶碗(ちゃわん)」(国宝、12~13世紀)などを紹介する特別展「国宝の殿堂 藤田美術館展―曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき―」(朝日新聞社など主催)が13日、奈良市の奈良国立博物館で始まる。12日に内覧会があり、多くの来場者が直径12・3センチの茶碗に浮かぶ星のような美しい輝きに見入った。
大阪市の藤田美術館は1954年、明治の実業家、藤田傳三郎(でんざぶろう)と子息が集めた美術工芸品を公開するために創立された。2022年春までリニューアル工事中で、この間、所蔵する国宝9件と国の重要文化財53件を奈良国立博物館で公開することになった。
曜変天目は黒壁の専用ブースに置かれ、真上と左右からの照明が、夜空の星に似た瑠璃色の輝きを際だたせる。奈良・興福寺旧蔵の絵巻「玄奘三蔵絵」(国宝、14世紀)や地蔵菩薩(ぼさつ)立像(国重文、13世紀)など明治期の神仏分離令や廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)などの影響で流出した文化財も展示される。奈良・西大寺にあったとされる仏像彩画円柱(13世紀)は、直径約20センチ、高さ約3メートルの木柱8本に、計16体の仏像が丁寧な線と豊かな色彩で描かれ、荘厳な仏堂の姿をしのばせる。
6月9日まで。月曜(4月29日、5月6日除く)と5月7日休館。一般1500円、高校・大学生1千円、小中学生500円。問い合わせはハローダイヤル(050・5542・8600)。(編集委員・小滝ちひろ)