統一地方選の後半戦が始まった14日。1958年の市制施行から女性市議が一度も誕生したことがない鹿児島県垂水市でも市議選(定数14)が告示され、女性2人を含む計17人が立候補した。
新顔の女性候補の出発式には、約30人の支援者らが集まった。女性議員が過去にいなかったという市は全国でも極めて珍しいとされ、応援に駆けつけた県内の女性地方議員は「当選したならば、日本中の全ての市に女性市議が誕生したことがあるという、記念すべき日になる」と強調した。
この候補は市の課題として病気の子どもへの支援などを挙げ、「垂水のために働きたい」と表明した。取材には「子育てや介護を担うことが多い女性には、生活者目線がある。当事者が議会で意見することが大事だ」と話した。
出発式に駆けつけた自営業の女性(55)は「議員は『上の人』というイメージだった。同じ女性だから身近に感じて話しやすい」。
もう一人の新顔の女性候補も14日朝、出陣式を開き、「ぜひこの地に女性議員を。市政の場へ押し上げてください」とあいさつ。陣営の「婦人部代表」という女性は応援演説で、「(垂水で)女性が選挙に出るのは大変なことで、批判もあると思う。しかし女性だからできる行政もたくさんある」と激励した。
出陣式に参加した自営業の男性(64)は取材に対し、「少子高齢化に苦しむ垂水に、女性の視点で変革を起こしてほしい」と話した。
市議選にはかつて4人の女性候補が1度ずつ立ったが、いずれも落選した。女性2人の立候補は初めて。ある現職候補は、その影響を「やってみないとわからない」と言いつつ、選挙カーから「今回、私にとって大変厳しい選挙です」と訴えた。
一方、別の現職陣営の幹部を務める男性は「親族で票を固めているから、女性票が動くことはない」と余裕を見せる。「女性候補が出たことで、華々しい選挙になりそうだね」
この陣営の選挙事務所の炊事場にいた70代の女性は「女性同士じゃないと分からないこともある。女性議員が1人2人いた方がいい」と話す。それでも、「同級生や親族で応援している人がいると(女性に)票は入れられない。それは仕方ないね」と苦笑した。(野崎智也、小野大輔)