神戸市垂水区で2016年に市立中学3年の女子生徒(当時14)が自殺した問題で、市の再調査委員会は16日、いじめが自殺の要因と認定する調査報告書を市に提出した。中1からいじめがあったが教職員の誰も深刻に受け止めなかったとし、「寄り添える教師が1人でもいたら命を救えた可能性がある」と指摘した。
報告書では、女子生徒は中1のころからインターネット上で中傷されるなどのいじめを受けていた。中2になると「絵がきもい」など陰口や悪口などが続き、中2が終わる時点で「強い喪失感などを抱き、心理的にかなり脆弱(ぜいじゃく)な状態になっていた」とした。
一方、教職員は誰もいじめと認識せずに「よくある女子同士の人間関係のトラブル」と捉えた。「様子をみる」「けんか両成敗」といった対応でいじめが深刻化したが、女子生徒の1、2年時には学校から市教育委員会へのいじめの報告は0件だった。報告書は「一対複数、一対集団という『構造的ないじめ』を深く理解し、寄り添える教師が1人でもいたら救えた可能性がある」とした。
この問題を巡っては、学校側が他の生徒と面談した際に作られたいじめに関するメモは、市教委の第三者委員会の報告書で「破棄された」とされていたが、首席指導主事が当時の校長に隠蔽(いんぺい)を指示したことが発覚。首席指導主事は今年1月、停職3カ月の懲戒処分を受けた。再調査委の報告書は「遺族や周囲の心ある生徒たちの思いが非常に軽く扱われている」と批判した。
女子生徒の母親はこの日神戸市内で会見し、「いじめと自死との関連を認めていただき感謝している。再調査の結果を受け、やっと娘の死と本当に向き合える」と語った。市教委の長田淳教育長は「重く受け止め、このような痛ましい事案が二度と起こらないよう、いじめの未然防止、早期発見に全力をあげていきたい」と話した。(野平悠一、西見誠一)