社会学者の大澤真幸さん=高久潤撮影
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「平成」から「令和」に元号が変わる。グローバルで通用する西暦が使われることも増えている中、新元号はなぜここまで話題を呼んでいるのか。社会学者の大澤真幸さん(60)は、日本特有のナショナルプライドの持ち方が影響しているとみる。どういうことなのか。
内輪で盛り上がる「令和」改元。外側に開くために、大澤真幸さんはイチローがモデルになると考えるそうです。
――国書が典拠の初の元号に注目が集まりました。
「新元号の発表でここまで盛り上がったのは意外でした。初めてではないでしょうか。『大化』以来の1300年超の歴史があるとはいえ、最初は日常的に使っていたのは朝廷があった畿内くらいだったでしょう。近代以降の改元は天皇の死去とほぼ同じで、昭和から平成への改元は自粛ムードが漂っていた。対照的に今回は『元号ブーム』と言えるほど。元号=和暦ですが、盛り上がりとは裏腹に暦の本来のあり方には反していることが浮き彫りになりました」
――どういうことですか。
「暦とは本来、社会の拡大志向を駆動原理とした時間のシステムです。すなわち、もともと自分たちと他人は別々の時間を生きていますが、暦を用いることで共通の意味や基準を与える。自分だけ、あるいはごく身近な『私たち』だけではなく、同じ時間を共有できる範囲を広げていく。例えば、西暦はキリストの誕生が、イスラム暦はムハンマドの聖遷が基準。フランス革命時には革命暦が作られましたが、いずれも『私たち』を外側に広げ、最後には普遍的な基準としようという意識の表れです。日本の元号は中国に起源を持ちますが、中国においても天命を受けた皇帝が世界・天下全体を治める、という考え方でした」
――今は違う、と。
「元号という仕組み自体が中国…