6月からの新体制を発表したトレーニングジム大手RIZAP(ライザップ)グループ。「プロ経営者」として知られ、構造改革を指南してきた松本晃氏(71)が就任1年で取締役を退任することになったが、再建は進むのか。瀬戸健社長(40)と、6月に新設する取締役議長に就任する中井戸信英氏(72)が25日、そろってインタビューに応じ、今後の展望や新体制の狙いについて語った。
おもなやりとりは以下の通り。
松本氏、ライザップ取締役退任へ「一定のめどたった」
――赤字転落の原因となった子会社の見直しに「一定のめどがついた」と言うが、どういう意味か。
瀬戸氏 店舗閉鎖、在庫の減損処理、事業縮小、そして子会社の売却を進めてきました。ダラダラやっても仕方がない。松本さんと一気に進めました。店舗はすでに約100店舗を閉めている。今後閉める店についても(19年3月期で)引当金をあてたり減損処理したりします。
(日用品販売会社ジャパンゲートウェイを売却するなど)大赤字を出している会社の売却はほぼすんだ。内部の販売管理費の削減も急激に進んだ。やめるべきものをやめたので、やるべきことをできるようになる。松本さんには本当に感謝している。今は前向きになれるフェーズになった。
――松本氏が取締役を退任することになった理由は。
瀬戸氏 ご本人の意思。ただ、退任後も特別顧問として変わらずご意見をいただく。
――赤字転落を発表してから、どういう半年だったか。
瀬戸氏 濃い半年だった。苦しいことがたくさんあった。店舗の縮小や閉鎖などに動けば副作用、反作用がある。100%の理解は得られず会社内でも混乱したこともあった。説明責任を果たしながら、実績を今後出すしかない。逃げずに向き合わなければいけない。
――社外取締役として元住友商事副社長の中井戸氏が新設の取締役会議長につく。その狙いは。
中井戸氏 社長と相談しながらこの形にした。新体制では社内取締役が瀬戸社長1人、社外取締役が5人となる。社外取締役が多ければ透明性が高く、ガバナンス(統治)が効いていると評価されるが、実際はそうでもない。
社外では見えないモノもある。取締役会議長なんて法律的にはあまり意味はない。ただ、取締役会の運営に責任を持ち、発言を促し、自分で提案もする。社外取締役だが週3回くらいは来る。準常勤くらいの気持ちだ。
オーナーが仕切る会社にガバナンスを効かせ、しっかりとサポートできるようにすることを考え、この形にした。
――ライザップに来る理由は。
中井戸氏 経営者の先輩から「苦しんでいる若い経営者がいる」と声をかけられたのがきっかけ。
企業が起業から上場し成長していく中で、アメリカでは平均4回くらいは社長が代わっていた。それぞれのフェーズによって経営者の資質は異なってくる。ただ、日本にはそういう文化はない。だからサポーターが重要になる。
アメリカにはない、若手経営者の成長を促したい。いずれはライザップガバナンスモデルとして売り出していけるくらいにしたい。
――ライザップの可能性とは。
中井戸氏 コア事業の利益率は非常に高い。また、「健康」事業には高いポテンシャルがある。
今は一対一で付加価値の高いサービスを提供している。この対象を個人から企業へと広げたい。その企業で働く人が健康であり続けられる「健康経営」はこれまで私が会社を経営してきて成し遂げられなかったこと。その健康経営を支援するサービスには高い可能性がある。健康事業を中核に成長していくことができると思っている。(聞き手・神沢和敬)