現代を生きる若者のリアルな心理描写で知られる小説家の朝井リョウさん(29)が東京都立西高(杉並区)を訪問した。新刊『死にがいを求めて生きているの』(中央公論新社)を題材に、和やかな雰囲気の中、生徒ら40人と様々なことについて語りあった。小説、そして言葉とは――。
曽根昇太郎さん(2年)「普段、何を考え、どんな思いで小説を書いているのですか」
「遠くにあると思っていた複数の物事が本質的には近いのだと感じたとき、そこに普遍性が宿り、小説が生まれることが多い。東京・秋葉原の歩行者天国での無差別殺傷事件や相模原市の障害者施設の殺傷事件のニュースなどがずっと頭の片隅にあった。犯罪を起こした彼らの『社会的に価値がない』といった発言に、原稿が進まない日の自分が重なった。そういうとき私は今日の自分に価値がないと思い、ご飯を抜くといった自罰的な行為をしてしまう。攻撃の向く先が外か内かの違いだけで、彼らと私に大きな隔たりはなく、本質的に変わらない。そう気づいたとき、今回の小説の根幹ができました」
「『命の価値』『生きる意味』は数値では表せない。感じ方、つまり心の問題。ただ今は、たとえば日常的に“少子化”や“税収が足りない”という言葉をよく聞くので、子どもを産んだ、納税額が多いというだけでその人のことを『社会的に生産性がある=価値がある』と評価してしまう傾向がある。心の問題を『社会的に生産性がある』かどうかで語ってはならないと感じる」
質問が相次いだのはタイトルの「死にがい」についてだった。この小説は「生きがい」を強く求める雄介と対極にある智也の関係を軸に、平成の若者を描いている。
諏訪遥子さん(2年)「挑戦し…