鎌倉時代に時宗(じしゅう)を開いた一遍(いっぺん、1239~89)らが広めた踊り念仏を現代に受け継いだ「踊躍(ゆやく)念仏」と声明(しょうみょう)を披露するイベントが28日、京都市東山区の京都国立博物館であった。特別展「国宝 一遍聖絵(ひじりえ)と時宗の名宝」(朝日新聞社など主催)の記念イベント。大勢の人たちが、「南無阿弥陀仏」などの唱和や鉦(かね)の荘厳な響きに聴きいっていた。
この日は、近畿各県の時宗の僧侶でつくる「時宗京都声明研究会」が出演。声明を唱え、首に下げた鉦を打ち鳴らしながら「踊躍念仏」を披露した。「遊行鼠(ねずみ)」と呼ばれるねずみ色の衣をまとった僧侶が片足を半分宙に浮かせるなど独特のステップを踏み、阿弥陀如来に見立てた別の僧侶に近づき、また元の位置に後ずさりする動きを繰り返した。この動きには極楽浄土で阿弥陀如来に会った後、現世に戻って人々を救う意味などがあるとされる。
一方、12日に京都国立博物館であった開会式では、滋賀県栗東市の常勝寺(じょうしょうじ)の踊り念仏講の女性メンバーたちが踊りを披露。太鼓を取り囲むように輪になって、鉦を打ち鳴らしながら軽やかな足運びで踊った。
特別展では、日本を代表する絵巻で、全国各地を遍歴した一遍の生涯を描いた国宝「一遍聖絵(ひじりえ)」が公開されている。聖絵には当時の踊り念仏の場面も描かれ、天を仰ぎ、足を上げるなどして激しく踊る人たちの姿が表現されている。大正大学専任講師の長澤昌幸さんによると、時宗寺院で継承されてきた「踊躍念仏」は能の影響を受けたとみられ、静かな動きだが、各地の在家信者に受け継がれてきた「踊り念仏」には、跳ねるような動きも残っているという。
特別展は6月9日まで。月曜(5月6日は除く)と5月7日は休館。問い合わせは京都国立博物館(075・525・2473)へ。