東西文化が交わったシルクロードを代表する世界遺産、中国の敦煌莫高窟(ばっこうくつ)が、日本の技術協力で「クローン文化財」として大規模に複製されることになりそうだ。観光客の急増による劣化を防ぎ、後世の修復で失われた千年以上前のオリジナルの姿の再現も目指す。
クローン文化財は、アナログの技法とデジタル技術を組み合わせて精巧に複製したもの。その特許を持つ東京芸術大学が、中国・敦煌研究院に技術協力することになった。海外への技術供与は初めてという。
切り立った崖をくりぬいて4世紀から約1千年にわたって築かれた莫高窟では、735の石窟が現存する。研究院によると、芸大の技術や模写、バーチャルリアリティーなど、新旧の技術を用いて計138窟を再現し、「莫高世界文化体験園」として見学拠点にする計画だ。すでに用地選定や建設資金集めを始め、数年後の完成を目指す。
中国の観光ブームで、莫高窟への訪問者は昨年、15年前の2・5倍の200万人近くに達した。吐息に含まれる二酸化炭素だけでも剝落(はくらく)や変色が進むため、石窟での滞在を短くするのが急務になっていた。王旭東院長は「実物を見た後にクローンを詳しく見学すれば、観光と保護を両立できる」と話す。
後世の修復で原形をとどめてい…