フィギュアスケート女子の三原舞依(シスメックス)は昨年、自分の髪の毛を寄付する「ヘアドネーション」をした。関節が痛む「若年性特発性関節炎」という難病と闘い、スケートで世界のトップを争う19歳。「困っていたり、苦しんでいたりする人に何か自分にできることはないか」と常に考えてきたという。胸の内を聞いた。
SP8位から躍進の三原 恩師の想定超えたフリーの演技
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昨年4月、三原は黒髪を31センチもバッサリ切った。一気に短髪になったが、「ちょっとでもロングヘアにしたいと思っている方に寄付できたらいいなと思った。どこかで使ってくれていたらうれしい」と笑みを浮かべた。
「ヘアドネーション」は脱毛症などの病気や不慮の事故などで髪の毛を失った人にウィッグ(かつら)を贈るための活動。テレビで見たり、知人がやっていたりして、三原は小学生の頃から、その存在を知っていた。高校生になって、自分でも寄付できることを知り、「髪の毛を伸ばすのが楽しくなった」。来年も31センチの髪の毛を寄付したいといい、「今は大事に伸ばしています」と話す。
幼少から慈善活動に触れてきた。「小学校で『人は支え合って生きていくんだ』って教えられましたし、ボランティア活動とかもたくさんした学校だった」。ベルマーク運動を真剣にやって、回収日にはスーパーの袋がパンパンになるまで集めた。軍手や雑巾を小学校に持っていって、学校周辺のゴミ拾いなどにも積極的に参加した。「自分にできることがあればやりたい」。そんな気持ちはずっと心の中にあった。
自らが病気を抱えていることも「関係があるかと言われれば、あるとは思う」という。2015年12月に若年性特発性関節炎と診断され、入院した。全身の関節が痛み、車いすで生活をしたともあった。今も薬を服用しながら、スケートに打ち込む。家族や周囲に支えられてきた実感があるからこそ、「恩返しというか、誰かの役に立てば、誰かに届けばいいなという思いはあります」。
ただ、氷上ではアスリートとしてのプライドがにじむ。「平等なスポーツのなかでやっている。病気を言い訳にしたくない。本当は公表したくなかったくらいです」。目標だった平昌五輪に届かなかった悔しさを、北京五輪にぶつける。「トリプルアクセル(3回転半)や4回転ジャンプが必要な時代になっていると思う。食らいついていきたい」。まず、来季の世界選手権出場を目指す。(大西史恭)
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〈みはら・まい〉 1999年8月22日生まれ、神戸市出身。小学生の時に浅田真央に憧れ、競技を始める。2017年の世界選手権5位で、同年の四大陸選手権では優勝。19年ユニバーシアード冬季大会では日本選手団の主将を務め、金メダルに輝いた。甲南大学2年。