天皇陛下が4月30日に退位し、皇太子さまが1日、新天皇に即位した。退位特例法に基づく代替わりで、元号は平成から令和となった。陛下は退位日の30日に国事行為の「退位礼正殿(せいでん)の儀」に臨み、「象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します」と述べた。
反日根強いオランダ、頭下げ続けた陛下(祈りの旅)
公人中の公人・天皇の心のスイッチ 「公」から「私」へ
陛下は退位して「上皇」に、美智子さまは「上皇后」となり、今後は一切の公務から退く。
上皇となった陛下(以後、上皇さま)は85歳。2016年8月、高齢に伴い、退位の意向をにじませるビデオメッセージを公表。政府による検討を経て、17年6月、一代限りの退位を認める皇室典範の特例法が成立した。これにより、1817年の光格天皇以来202年ぶりの退位が実現した。
新天皇陛下は59歳。新皇后の雅子さまは55歳。53歳の秋篠宮さまは皇太子待遇の「皇嗣(こうし)」になり、皇位継承資格者は上位から順に秋篠宮さま、秋篠宮家の長男で12歳の悠仁(ひさひと)さま、83歳の常陸宮さまの3人のみとなった。
新天皇即位に伴い、皇居・宮殿では1日午前10時半から、皇位のしるしとされる神器などを引き継ぐ「剣璽(けんじ)等承継の儀」、午前11時10分から新天皇が最初のおことばを述べる「即位後朝見の儀」がそれぞれ国事行為として行われる。
上皇さまは退位にあたり4月30日、宮殿で午後5時から憲政史上初の退位礼正殿の儀に臨んだ。美智子さまや新天皇ご夫妻、秋篠宮ご夫妻のほか、三権の長や閣僚、地方代表ら294人が参列。安倍晋三首相が国民を代表して「深い敬愛と感謝の念をいま一度新たにする次第であります」と述べたのに続き、上皇さまが「今日をもち、天皇としての務めを終えることになりました」と在位中最後の「おことば」を述べた。天皇の務めを「国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは、幸せなことでした」と述懐。令和の時代が「平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります」と結んだ。儀式は約10分間で終わった。(島康彦、多田晃子)
新天皇・皇后両陛下の横顔
「国民に常に寄り添い、人々と共に喜び、あるいは共に悲しみながら、象徴としての務めを果たしてまいりたい」。新天皇陛下は皇太子時代の2月の記者会見で、即位への思いをこう語った。
59歳。学習院大時代の卒業論文のテーマは「中世瀬戸内海水運の一考察」。留学した英オックスフォード大では「18世紀のテムズ川の水上交通、物資流通」を研究、治水や利水など「水」問題の研究をライフワークとしてきた。
趣味は登山で、170超の山を踏破。ジョギングを日課としている。ビオラ奏者でもある。語学にたけ、国際親善の場や国際会議などでは英語やフランス語でスピーチをする。海外では市民との写真撮影に応じるなど気さくな一面も見せる。
新皇后の雅子さまは55歳。幼少期を旧ソ連、米国で過ごし、英仏独の3カ国語が堪能。米ハーバード大、東京大で学び、父と同じ外交官の道を歩み、「僕が一生全力でお守りします」との言葉を受け入れ、1993年に結婚し皇室に入った。
2001年に長女愛子さまを出産。その2年後から「適応障害」の長い療養生活に入った。近年体調は上向き、公務への出席のほか、教育や貧困、環境問題などについて専門家から「進講」を受けるなど活動の幅は広がりつつある。昨年12月の誕生日に際し、「国民の幸せのために力を尽くしていくことができますよう、研鑽(けんさん)を積みながら努めてまいりたい」と新皇后となる決意を文書でつづった。(緒方雄大)