父親から娘への性暴力をめぐる裁判で、無罪判決が続いている。「抵抗が著しく困難だったとは言えない」などの理由だ。被害経験がある女性らは、「親子の力関係は対等じゃない。怖くて抵抗なんかできるわけない」。実態と、司法の判断のギャップに打ちひしがれている。
大阪府内の女性(19)は、「抵抗できる」ことを前提にした判決にショックを受けた。「抵抗したらいいって言うけど、そんなの無理。分かってほしい」
小学2年の時だった。休日、昼寝中に義父から性暴力を受けた。「静かにしろ」。怖くて指示に従うしかなかった。「トイレに行きたいと、その場を離れるのが精いっぱいの勇気だった」
トイレから出て、居間にいた母に泣きながら打ち明けた。味方になってもらえず、「3人の秘密だ」と口止めされた。
その後、妹や姉も義父に「(体を)触られた」と口にしたことはあったが、詳しく聞けなかった。姉が義父に反抗するとハンガーで殴られ、真冬に家から閉め出されるのを見た。自分は率先して食器を洗うなど、親を怒らせないよう常に機嫌をうかがった。義父にされたことを話せば、家族がバラバラになると思って沈黙を守った。
高校生になり、中学時代の担任と話す機会があった。妹が、義父に殴られるなど虐待を受けていることを相談する中で、自らの被害も明かした。児童相談所に通報され、保護施設に入った。学校や家庭での日常を失い、生きる意味が分からなくなって薬を大量に飲んだ。入院し、単位が足りなくなって高校を中退した。現在は家族と離れて暮らす。
関西地方の女性は、娘が10代…