北朝鮮による拉致問題をテーマにしたシンポジウムが3日、米ワシントンの保守系シンクタンク「ハドソン研究所」で開かれ、日本からは北朝鮮に拉致された被害者の家族らが参加した。横田めぐみさん(拉致当時13)の弟拓也さんは「全拉致被害者の即時一括帰国の実現が果たされない限り、(北朝鮮に)経済支援をすることはない。部分的な解決や段階的な解決では納得しない」と訴えた。
この日のシンポジウムには北朝鮮に拘束され、帰国後に死亡した米バージニア大学生、オットー・ワームビア氏(当時22)の母シンディーさんも参加。オットーさんを失った悲しみを訴え、北朝鮮を「地球上におけるがんだ」と非難した。「北朝鮮への圧力を維持することができなければ、北朝鮮は変わることはない」と述べ、国際社会の圧力によって問題の解決をはかる重要性を強調した。
安倍晋三首相は北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長との日朝首脳会談について、前提条件をつけずに実現に向けた調整を進める方針を固めている。シンポジウム後、横田さんは記者団に「(安倍首相の)全拉致被害者の即時一括帰国があるというスタンスは何も変わっていないと思う。日朝(首脳会談)で解決しない限りはこの問題は終わらない」と述べ、日朝首脳会談に期待感を示した。
横田さんらはシンポジウム後、米ホワイトハウスのポッティンジャー国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長とも会談し、拉致問題の解決を訴えた。(ワシントン=園田耕司)