イランが核合意の履行の一部を即時停止すると宣言したのに対し、合意の当事者である英独仏は8日、強い憂慮を表明した。米国が合意から離脱して対イラン制裁を再発動したことへの報復措置とはいえ、イランが逸脱した行動をとれば厳しい対応をせざるを得ないとして、合意に踏みとどまるよう訴えた。
ドイツのマース外相は「イラン政府が今日とった措置には同意しない」と述べ、英国のハント外相も「イランがこれ以上の(報復)措置をとらず、約束を守るよう求める」とした。仏外務省も声明で懸念を表明し、「状況をエスカレートさせる行動を控えることが重要だ」と関係国に自制を求めた。
ロシア、中国とともに核合意の当事者である英独仏は、合意の維持を強く望んでいる。一方、欧州企業が米国の制裁を回避してイランと取引できる仕組みをめざしているが、確立できていない。イランは60日以内に原油取引継続などの目的を達成するよう要求し、できなければ履行停止の範囲をさらに広げる構えだ。
マース氏は「イランが核合意を完全に実施することを期待する」と強調し、ハント氏は「イランが約束を守らないなら、相応の結果を招く」として欧州各国の対イラン制裁復活も示唆。両者とも、軍事的にイランと対峙(たいじ)する他の中東諸国の存在に言及し、地域の安定を損なう核合意崩壊を防ぎたい思いをにじませた。(ベルリン=野島淳、ロンドン=下司佳代子)