トランプ米大統領による対中関税の引き上げ表明を前に、米中高官が1日まで北京で開いた通商協議で、中国の地方政府による産業補助金をめぐって激しく対立していたことが分かった。その報告を受けたトランプ氏が強硬姿勢に転じたことで、中国側は9日にワシントンで開く協議に送る代表団の規模を縮小した。
複数の関係国の外交筋が明らかにした。中国が受け入れにくい要求を米国が最終盤で突きつけた形だ。
米通商代表部(USTR)は8日、中国からの2千億ドル(約22兆円)分の輸入品への追加関税を、10日に10%から25%に引き上げる予定を官報で通知した。
中国外交筋によると、それまでの協議では、米側が見直しを求める中国の国有企業への補助金について、中国側も一定程度は応じる姿勢を表明。懸案の9割は合意に達しており、中国側は「合意できた範囲」での早期妥結を目指していた。
だが、4月30日と5月1日に北京であった高官級協議で、米側は、地方政府が地元企業に出す産業補助金についても見直しを強く要求。中国側が「地方の補助金は景気対策の要素もあり、見直しは受け入れ難い」「世界貿易機関(WTO)のルール違反でもない」とはねつけたことで、対立が深まった。
米側はさらに、①中国国外へのデータの持ち出しを規制する「サイバーセキュリティー法」の是正②外資に技術移転を強いることを禁じた「外商投資法」の実施状況を米国が監視する仕組みの導入――もそれまで通り強く主張。中国側は「内政干渉に等しい要求だ」と突き返したという。
別の外交筋によると、中国側は、こうした米国の要求項目について合意文書に書き込まず、国内の法改正などで対応すると答えたという。米側は、中国が姿勢を後退させ、合意内容の実行を逃れる口実をつくったと受け止めたとみられる。
協議終了後、国営新華社通信が配信した記事には、通例だった「新たな進展があった」などとする前向きな記述はなかった。
その直後の5日にトランプ氏が突然、対中関税の引き上げをツイートしたことで、中国側は「トランプ氏のわなにはまらない」と警戒。9日にワシントンで開く協議に送る代表団の規模の縮小を決めたという。(北京=冨名腰隆、福田直之)
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