1967年に茨城県利根町布川(ふかわ)で起きた強盗殺人事件「布川事件」で無期懲役が一度確定し、2011年に再審で無罪となった桜井昌司さん(72)が、「違法な捜査によって有罪となった」などとして国と県に約1億9千万円と遅延損害金の支払いを求めた国家賠償請求訴訟の判決が27日、東京地裁(市原義孝裁判長)であった。判決は、国と県に連帯して約7600万円を支払うよう命じた。
桜井さんと別の男性(15年に死去)は67年、大工の男性(当時62歳)を殺害し、現金を奪ったとして強盗殺人罪で起訴され、78年に無期懲役の判決が確定した。しかし、裁判をやり直す再審の請求が2回目で認められ、11年に再審無罪が確定した。12年には不当な身柄拘束に対して約1億3千万円の刑事補償金が支払われたが、桜井さんはさらに「違法捜査」を訴えて同年に提訴した。
原告側は茨城県警について、2人を別の窃盗事件で逮捕したうえで、強盗殺人事件の取り調べを長期間行い、うその自白を強要したと主張。検察についても、現場に第三者の毛髪が残っていたり、自白した殺害方法と医師の「死体検案書」の内容が異なっていたりしたのに、公判でこうした証拠を提出しなかったと指摘した。
一方、被告の県や国は、「慎重な取り調べをしており、捜査に違法性はない」と反論していた。(新屋絵理)