29日のニューヨーク株式市場は、米中通商摩擦が世界経済を失速させかねないとの警戒感から、大企業でつくるダウ工業株平均が続落し、一時は400ドルを超す下げとなった。終値は前日比221・36ドル(0・87%)低い2万5126・41ドル。2月11日以来、ほぼ3カ月半ぶりの安値水準に沈んだ。
ハイテク株が多いナスダック市場の総合指数も続落し、同60・04ポイント(0・79%)低い7547・31で終えた。
中国共産党機関紙の人民日報は29日掲載の評論で、米国に対するレアアースの輸出制限を示唆した。貿易摩擦が深刻化しかねないとの懸念から、ナイキなど中国ビジネスの割合が大きい銘柄を中心に売り注文が先行した。米中経済の減速懸念から原油価格も低下し、エネルギー株が売られた。
投資家はリスクを避けようという姿勢を強めており、債券市場では米長期金利の指標となる10年物米国債の利回りが低下(債券価格は上昇)し、一部の短期金利を下回る「逆イールド」となった。この現象は景気減速の前兆と受け止められることも多く、市場心理をさらに冷やした。(ニューヨーク=江渕崇)