日本銀行が金融緩和で買っている上場投資信託(ETF)の時価ベースでの保有額は、3月末時点で前年比18%増の28兆9136億円となった。東京証券取引所第1部に上場する企業の時価総額の4・8%を占める規模となった。
29日発表した2019年3月期決算で示した。日銀が持つETFは、全体でみると今は取得時の価格(簿価)より時価の方が高く、「含み益」がある。ただ、3月末の含み益は1年前から1兆2千億円ほど減り、3兆9124億円。「(両年度末の)株価水準は変わらなかった」(日銀)としており、株価水準がより高い時に買ったETFが増えた影響とみられる。
総資産は5・4%増の557兆円。日銀が年間6兆円ペースでETFの買い増しを続けると、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立機構(GPIF)の保有額を来年中にも抜いて、日本株の最大の株主になる可能性がある。保有資産が膨らむほど、株価や金利の変動の影響は大きくなる。ETFで「含み損」が今後出れば、その分を引当金として損益に計上する。時価が簿価より3割以上落ちると、簿価を切り下げる減損処理も必要となる。
国債でも財務悪化の恐れはある。金融の「正常化」へ向けて金利を上げる際、日銀から民間金融機関への利払いが増えるが、保有国債の金利でまかなえない可能性もある。財務悪化のリスクに備えて引当金を積み立てており、今回の決算では前年の約2倍の8154億円を計上した。(湯地正裕)